2014年12月7日(日)午後
スタジオ・オルフェーオ主宰の小澤高志さんによる先導のもと、華やかにヒストリカル衣装を身に纏った60余名が東京・茗荷谷ダンスプラザに集い、ルネサンスダンスを踊り楽しみました。
舞踏の第1部は、トワノ・アルボーThoinot Arbeau(1520‐1595)のオルケソグラフィーOrchesographyに収められた数々のブランルに始まり、ピョンピョン跳ねたりする動きの豆のブランル(branle des pois)やお役人のブランル(branle de l’Official)など、シンプルながらも踊る歓びに満ちたものが踊られました。
音楽もすべて生のルネサンス舞曲。この日の舞踏会のために特別に編成されたルネサンス・ダンスバンド(バロック・ヴァイオリン 佐藤駿太、ヴィオラ・ダ・ガンバ 品川 聖、テオルボ&ルネサンスリュート 上田朝子、ゴシック・ハープ 斉藤ひとみ 西野直美、ルネサンス・リュート&ルネサンス・ギター 西野潤一、打楽器 立岩潤三)が舞踏会を通して音楽を担当しました。また、舞踏の幕間にはルネサンス・ダンスバンドのメンバーによる独奏コーナーも設けられ、舞踏会のなかに小さなコンサートの要素も盛り込まれました。
驚くべきは、ミニコンサートの終演からの自然な流れで第2部のパヴァーヌが始まったことでした。そこには音楽が身体を自然に誘導する光景が見られました。男女がペアとなり、クロード・ジェルヴェーズ Claude Gervaise (1510?-1558?)の「ダンスリー」のなかからパッサメッツォによるパヴァーヌ、ヴェニス風パヴァーヌと続き、足の躍動的な動きの伴うパッサメッツォによるガイヤルドが踊られました。
会の終わりの第3部は、全員で輪になって踊るファランドールで締め括られました。終曲ではルネサンス・ダンスバンドのヴァイオリニストとリュート奏者も踊り手に混じりながら演奏し、熱気と喜び溢れる幕閉めとなりました。
この舞踏会を企画したのは、2014年夏に有志のイベントオーガナイザー達によって立ち上げられた古楽イベント企画Kogakulian(コガクリアン)です。会場装飾をどうするかということや、チラシ作成、Web申込みの方法、司会の進行や舞踏の流れに至るまで、夏から秋頃にかけて綿密な打ち合わせが行われました。これまでに各運営メンバーがかかわった「古楽かふぇ」や2年前の夏に行われた「水上の古楽まつり」の経験も反映され、古楽を本当に好きな人々が楽しめるようさまざまな工夫を加えることができました。
また、舞踏会参加者の一人に『ルネサンス踊り絵本』などで知られるイラストレーターの吉田稔美さんがいらっしゃったことから、彼女のポストカードなどの小さな作品を販売する企画も実現しました。スペースが限られた空間でなかなか大変ではありましたが、古楽関係のコンサートのチラシも壁に設置するかたちとなり、賑やかなイベント空間ができました。
今回の舞踏会では、イベントの当日ばかりでなく、当日に至るまでの参加者とのコミュニケーションをも愉しみたいという意図があり、それもある程度は実現することができたように思われます。たとえば、《かんたん衣裳作成》講座のヒラヒラや、日常的な衣服を使って本格的なルネサンス衣装を作ってみようといった革新的な試みもWeb上で発信され、参加者を含む多くの人々によって楽しまれました。また、ルネサンス・ダンスバンドの練習風景も事前に公開され、共有されました。
西欧の歴史的な音楽をコンサートなどで聴く機会は一般的なものとなった昨今にあっても、古楽を享受する楽しみかたのヴァラエティーはまだあまり十分でないような気がしています。古楽を基軸に据えた本イベントが、プロの演奏家や研究者、音楽以外の諸学芸に興味を持った方や面白そうなのでちょっと踊ってみたかった人々を分野横断的に結びつけ、かかわる人々を巻き込むことによって、よいものが生まれ、実り多い出会いのきっかけを提供できたことを願ってやみません。
文: 山下馨
編集: かいだみかり
写真:
1,2 交響詩モンタニャール
3〜8 かいだみかり
集合写真 浅水屋剛氏